刺繍蘊蓄

刺繍、服飾に関するノート

リュネヴィル刺繍 その1

リュネヴィル刺繍とは、先の尖った細いかぎ針を使い、刺繍台に張った生地に、ビーズやスパンコールを縫い付ける特殊な刺繍技法のことです。オートクチュールのドレスの刺繍には欠かせない刺繍技法の一つですが、現在では専門の刺繍工房か、一部の愛好家のもとでしか目にする機会は少なくなっています。

フランス語では croche de luneville(クロッシュ ド リュネヴィル)

※ lunevilleの最初のeにはアクサンがつきます。

 

 

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 18世紀頃東インド会社を通じて、かぎ針を使った刺繍技法が中国からヨーロッパに伝わり、時のフランス宮廷のファッションリーダー、ポンパドゥール侯爵夫人(Madame pompadour 1721-1764)がこの中国の刺繍のドレスを好んだことから大流行しました。主に絹糸でチェーンステッチをしていくこのかぎ針の刺繍は、ボーヴェ刺繍( point de Beauvais)と呼ばれ、特に男性用宮廷衣装を装飾する刺繍として発展しました。リュネヴィル刺繍は、しばしばこのボーヴェ刺繍の"いとこ"と称されます。

 

(写真:「ボーヴェ刺繍をするポンパドゥール夫人」ロンドン・ナショナルギャラリー)

 

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